公図の縮尺はほとんどの場合500分の1ですが、色んな公図を取得していると、違う縮尺の公図もでてきます。
さて、公図の縮尺はどのように定められているのでしょうか?
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公図とは?法14条地図とは?
冒頭で公図と書きましたが、正確には法14条地図といいます。
法とは、不動産登記法のことを指します。
不動産登記法 第14条(地図等)
- 登記所には、地図及び建物所在図を備え付けるものとする。
- 前項の地図は、1筆又は2筆以上の土地ごとに作成し、各土地の区画を明確にし、地番を表示するものとする。
- 第1項の建物所在図は、1個又は2個以上の建物ごとに作成し、各建物の位置及び家屋番号を表示するものとする。
- 第1項の規定にかかわらず、登記所には、同項の規定により地図が備え付けられるまでの間、これに代えて、地図に準ずる図面を備え付けることができる。
- 前項の地図に準ずる図面は、1筆又は2筆以上の土地ごとに土地の位置、形状及び地番を表示するものとする。
- 第1項の地図及び建物所在図並びに第4項の地図に準ずる図面は、電磁的記録に記録することができる。
公図と法14条地図の違いについては、別記事「公図とは?公図の見方や法14条地図との違いについて説明します。」にて詳しく解説しています。
一般的には公図と呼ばれることの方がまだまだ多いので、ここではあまり区別せず、公図と呼んでいきます。
正確な用語の違いについては、関連記事を参考にしてみてください。
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公図とは?公図の見方や法14条地図との違いについて説明します。
不動産登記法は法務局に地図を備え付けることを義務付けています。 不動産登記法第14条1項 登記所には、地図及び建物所在図を備え付けるものとする そもそも不動産登記は公示を目的とするものなので、登記され ...
公図の縮尺は?
ここからがこの記事の本題です。
では、公図の縮尺にはなぜ500分の1や600分の1、1000分の1なのがあるのでしょうか。
公図の縮尺は不動産登記規則の第10条(地図)に定めがあります。
不動産登記規則 第10条2項(地図〕
地図の縮尺は、次の各号に掲げる地域にあっては、当該各号に定める縮尺によるものとする。ただし、土地の状況その他の事情により、当該縮尺によることが適当でない場合は、この限りでない。
- 市街地地域(主に宅地が占める地域及びその周辺の地域をいう。以下同じ) 250分の1又は500分の1
- 村落・農耕地域(主に田、畑又は塩田が占める地域及びその周辺の地域をいう。以下同じ)500分の1又は1000分の1
- 山林・原野地域(主に山林、牧場又は原野が占める地域及びその周辺の地域をいう。以下同じ)1000分の1又は2500分の1
このように宅地、田畑などの農地、山林原野、などの地域性に応じて縮尺が定められています。
地域 | 縮尺 |
市街地地域 | 250分の1、500分の1 |
村落・農耕地域 | 500分の1、1000分の1 |
山林・原野地域 | 1000分の1、2500分の1 |
公図の精度区分
また、縮尺と同時にその精度についても地域ごとに定められています。
地域 | 精度区分 |
市街地地域 | 精度区分甲二まで |
村落・農耕地域 | 精度区分乙一まで |
山林・原野地域 | 精度区分乙三まで |
ここでいう精度区分は、国土調査法施行令別表第5に掲げる制度区分になります。
精度区分 | 筆界点の位置誤差 | |
平均二乗誤差 | 公差 | |
甲1 | 2cm | 6cm |
甲2 | 7cm | 20cm |
甲3 | 15cm | 45cm |
乙1 | 25cm | 75cm |
乙2 | 50cm | 150cm |
乙3 | 100cm | 300cm |
参考 国土調査法施行令
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なぜ公図の縮尺には600分の1がある?
公図をよく使う方は「公図にはよく600分の1の縮尺があるけど、なぜ?」という疑問を抱くんじゃないでしょうか。
600分の1の公図の下の欄をみると、次のように書かれているんじゃないでしょうか。
分類:地図に準ずる図面
種類:旧土地台帳附属地図
不動産登記法が求める地図は、現地復元能力のある正確な地図です。
しかし、まだまだ法14条地図の整備は遅れており、古い統計にはなりますが、平成22年4月現在では全体の内、約6割の整備率となっています。
残りの4割近くはというと、古くて精度の低い地図をそのまま使っているのです。それを「地図に準ずる図面」といいます。
未だに明治時代の地租改正の際に整備された公図も多く、その多くは600分の1の縮尺となっています。そのため、実務ではよく600分の1の地図をまだ見かけるのです。
なぜ古い公図は600分の1なのか
もう少し突っ込んでみましょう。
なぜ古い公図は600分の1という、中途半端な縮尺なんでしょうか。
これは古い地図が、明治時代の地租改正の際に作成されたことと関係があります。
登記はメートルなどという単位ではなく、尺貫法が用いられていました。
その際、地図は「1間(けん)=1分(ぶ)」で作成されました。
古い単位なので分かりづらいですが、1間は6尺、6尺は60寸です。60寸は600分となります。
1間 = 6尺 = 60寸 = 600分
つまり、1間=600分となるので、600分の1の縮尺が多く作成されたのです。
600分の1の公図を見る際の注意点
600分の1の公図を見かけたときは、距離などの辺長が正確ではないことを念頭にいれて、公図を見なければなりません。
500分の1で作成された法14条地図は精度の高い正確な地図ですが、600分の1の公図はあくまで「地図に準ずる図面」です。
先ほど書いたとおり、明治時代に作成されたものなので、地図はかなりいい加減。土地ごとの位置関係は正確ですが、長さはあまり当てになりません。
面積も概ね、実際の面積よりも小さくなっていることが多いです。これを縄伸びといいます。
なぜ実際よりも小さくなっていることが多いんでしょう?
それは、税金を払いたくないからですね。この頃の公図は税金(地租)の算定のもとになるものだったので、面積が大きいとそれだけ多くの税金を支払わなければならなかったのです。
縄伸びについては別記事「縄伸び・縄縮みとは?縄伸びの調査方法や縄伸び率について」にて詳しく解説しています。
縄伸びの土地をどのように調査するのか、地図の面積と実際の面積が違うときに、どのような調査をしなければいけないのかを解説しています。
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たくさんの縮尺に対応した定規ってあるの?
不動産を扱っていると、500分の1や250分の1、600分の1などのたくさんの縮尺の地図をみなければなりません。
普通の定規を使って、縮尺の計算をするのは大変ですね。
そのため不動産を扱う人は三角スケールという特殊な定規を使います。
縮尺の異なる目盛りが6種類ついているので、一本の定規でさまざまな縮尺の地図の距離を測ることができます。
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