裁判の判決書や離婚調書、遺言公正証書など世の中には様々な公的文書があります。公的な文書には原本や正本、抄本、謄本など、○本というものが複数存在します。
普段の仕事の中で、何気なく理解し、何気なく使い分けていると思いますが、正確な意味、違いまでは知らない方が多いんじゃないでしょうか?
今回は公的文書の種類とその違いについて解説します。
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原本の意味
原本とは、文書の作成者が作成した文書のそのもの、つまりはオリジナルの文書を指します。オリジナルの文書なので、唯一無二のもっとも大事な文書となります。
民事訴訟法第252条では、「判決の言い渡しは、判決書の原本に基づいてする。」と規定されています。判決の言い渡しは、副本などの写しでは行うことができません。原本でないと駄目なんですね。原本がいかに大事なのかが法律上でもわかると思います。
謄本の意味
謄本とは、原本の写しです。単なる写しではなく、全部の写しで、原本と同一の文字・符号を用いて完全に同一である必要があります。
謄本は原本の存在とその記載内容の全部を証明するために作成されます。
謄本の例
- 戸籍謄本
- 登記簿謄本(全部事項証明書)
- 公正証書謄本
- 審判書謄本
正本の意味
正本とは、謄本の一種であって、法律の規定により、特に権限のある者(原本作成者や原本作成者に指示された者)が、原本に基づいて作成した文書で会って、原本と全く同一の法的効力がある文書のことです。
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謄本と正本の違い
正本は謄本の一種であって、謄本は正本を内包します。しかし、正本は原本と同一の効力をもって通用しますが、謄本にはこの効力はありません。正本の方が厳格に作成要件が定められています。
民事執行法25条本文では「強制執行は、執行文の付された債務名義の正本に基づき実施する。」と規定されています。債務名義(判決書)の原本は、裁判所に保管されていることから、執行裁判所や執行官に提出することができません。それでは強制執行の手続きができないことから、原本ではなく正本に基づいて強制執行がなされることになります。
原本と正本の違い
あくまで原本は1つですが、正本は1つとは限りません。原本作成者が複製すれば何通でも同じ文書を作製することができますよね。正本は複数の場合もあるのです。
抄本の意味
謄本に対するものとして抄本があります。抄本の説明をする前にちょっと謄本について振り返ってみましょうか。
謄本とは、原本の写しです。単なる写しではなく、全部の写しで、原本と同一の文字・符号を用いて完全に同一である必要があります。
これに対して、抄本も原本の写しですが、一部の写しであることが異なります。原本の全部を写したものが謄本、一部を切り取って写したのが抄本です。
抄本の例
- 登記簿抄本
- 戸籍抄本
似たものとして「抄録抄本」もあります。
謄本に対するものとして抄本がありますよというのがさきほどの説明でした。正本に対するものとしては「抄録抄本」があります。
公証人法第49条1項
- 数事件ヲ列記スル証書又ハ数人各自ニ関係ヲ異ニスル証書ニ付テハ有用ノ部分及証書ノ方式ニ関スル記載ヲ抄録シテ其ノ正本ヲ作成スルコトヲ得
- 前項ノ正本ニハ抄録正本タルコトヲ記載シ前条第一項第二号ノ記載ニ代フルコトヲ要ス
副本の意味
副本は正本と対のものとして存在します。正本は原本の写しでしたが、副本は正本の写しです。
官公庁に申請書などの書類を提出する場合、正本としての書類とそれを複写した副本を提出することがよくありますね。印鑑などの扱いは求められる書類の性質によって異なる場合はありますが、正本の写しが副本です。
副本に「この副本は正本と相違ない」と書類作成者の印をもって証する場合もよくありますね。
法律上では戸籍法で正本と副本が登場します。
戸籍法第8条
- 戸籍は、正本と副本を設ける。
- 正本は、これを市役所又は町役場に備え、副本は、管轄法務局若しくは地方法務局又はその支局がこれを保存する。
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まとめ
最後にもう一度、今日出てきた単語をおさらいしてみましょう。
- 原本…オリジナル文書
- 謄本…原本の全部の写し
- 抄本…原本の一部の写し
- 正本…謄本の一種であって、書類作成者などが作成した原本と同じ効力をもつもの
- 副本…正本の写し