隣地の所有者と土地の境について意見が食い違う場合があります。
境界に関する紛争について解決してくれる公的な制度が筆界特定制度です。
筆界特定制度とはどのような制度なのでしょうか?メリット・デメリットはあるんでしょうか。
筆界とは?境界とは?
境界とは何かの境目ですね。
境界には2つの意味があります。
境界の2つの意味
- 登記された土地の境目、土地が登記された際にその土地の範囲を土地の範囲を区画する者として定められた線をいいます。公法上の境界
- 所有権の範囲を画する線、私法上の境界
普段使われる境界という意味には、上の2つの意味があります。
その内、公法上の境界のことを筆界といいます。
筆界とは?
筆界の筆とは、土地登記簿上の土地の個数の単位で、地番を付して区画されたものをいいます。
筆界は所有権の範囲を画する線とは異なる概念です。一般的には境界と筆界は一致することが多いですが、必ず一致するというものではありません。
筆界は、所有者の意思によって決められるものではありません。
筆界がどこにあるのか分からないとき、境がどこにあるのかを特定する制度が筆界特定制度です。
筆界特定制度とは
筆界特定制度は、土地を所有している者(所有権登記名義人など)の申請により、筆界特定登記官が、その土地に隣接している民有地・公有地との筆界がどこに存在しているかを特定する制度です。
新たに筆界を定めるということではなく、既にある筆界を、調査の上で筆界特定登記官が明らかにする制度です。
土地の所有権登記名義人等からの申請に基づいて、筆界特定登記官が、筆界調査委員が調査の上提出した意見を踏まえ、1つの土地及びこれに隣接する他の土地について、不動産登記法の定めるところにより筆界の現地における位置を特定すること
筆界特定制度のメリット・デメリット
筆界特定制度のメリット
土地の境界・筆界トラブルは、裁判で争うことになることが多く、解決まで長期間かかることが多くありました。
これは、紛争トラブルの相手方が非協力的で話し合いに応じてくれなかったりすることが多かったからです。
しかし、筆界特定制度では、隣地の土地所有者の同意がなくても、土地所有者の申請のみで解決を図ることができます。裁判とは違い、精神的な負担も少なくなります。
筆界特定制度は行政手続きなので、一般的には裁判よりも迅速に処理されますし、費用負担も少なくなります。
筆界特定制度のデメリット
筆界特定制度は、あくまで筆界を特定する制度です。
冒頭で説明しましたが、土地の所有権の境である境界とは別のものです。
筆界特定制度の期間
筆界特定制度の標準的な処理期間は、東京法務局では9カ月とされています。
ただ、関係者の数や事案の複雑性・困難性により標準的処理期間よりも長期にわたるケースもあります。また、9カ月はあくまで東京法務局の定めるものであり、各法務局・地方法務局の実情に応じて定まります。
筆界特定制度の流れ
- 申請人(土地の所有者など)は、所有する土地を管轄する法務局または地方法務局に筆界特定の申請をします。
※手数料が必要となります。 - 申請人からの申請に基づき、法務局または地方法務局が必要な調査・測量を行います。
※測量が必要な場合は、測量費用の納付が必要となります。 - 申請人や関係人には、意見を述べる機会や資料を提出する機会が認められています。
- 外部の専門家である筆界調査委員の意見を踏まえ、法務局の筆界特定登記官が筆界を特定します。
参考 法務省|筆界特定制度
筆界が分からない土地は?
土地の筆界を確定できない土地に筆界未定地があります。
筆界未定地については、別記事「筆界未定地とは?」にて詳しく解説しています。
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筆界未定地とは?
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