法定地上権について解説していきます。
法定地上権はその文字のとおり、「法律が定めた地上権」です。
地上権とは何だっけ?という方は、別記事「用益権とは?地上権や地役権の内容・違いは?」をお読みください。
地上権を具体的に説明しています。
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用益権とは?地上権や地役権の内容・違いは?
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法定地上権とは?その定義
「法律が定めた地上権」という説明だけではさすがに分かりづらいですね。
まずは民法の条文を確認してみましょう。
土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、その建物について、地上権が設定されたものとみなす。この場合において、地代は、当事者の請求により、裁判所が定める。
法定地上権のイメージ図
抵当権の実行により、Aさん所有の土地・建物が別の人(BさんとCさん)の所有になってしまったとします。
本来であれば、Bさんには土地を使用する権利がないので、BさんはCさんと借地契約などの土地を使用する契約をする必要があります。
しかし、地主であるCさんは契約をする必要はありません。土地を貸してあげずに建物撤去を求めることもできるわけです。
そこで、民法はこのような場合には抵当権設定者はその土地に地上権を設定したものとみなして、建物を撤去しなくても良いとしたのです。
建物撤去を安易に認めてしまうと、せっかくの財産である建物の価値が認められないことになり、国民経済の観点から損失が大きいから
法定地上権の成立要件
抵当権の実行により、いつでも法定地上権の成立が認められるわけではありません。
法定地上権が成立するための4つの要件があります。
- 抵当権設定時に土地上に建物が存在すること(物理的要件)
- 抵当権設定時に土地と建物が同一所有者に帰属していること(所有者要件)
- 土地又は建物に抵当権が設定されること
- 抵当権実行により土地・建物が異なる所有者に帰属すること
ここで抵当権設定時とは、「抵当権の設定登記のとき」と解されることが多いです(執行裁判所によって運用が異なります)。
法定地上権の成立要件については、個別のケースによって判断が難しいものがありますので、具体的に説明していきます。
建物の存在(物理的要件)の具体例
建築予定の建物
土地の抵当権設定時、建物が存在しておらず、建築予定にすぎない場合には法定地上権は否定されます。
しかし、建物完成が土地抵当権設定から数か月以内である場合には、法定地上権の成立が肯定されるケースが多いです。
抵当権設定後の建物の建築
更地に抵当権を設定した後、建物が建築されてこれに抵当権が設定される場合、法定地上権はどのように扱われるのでしょうか?
この場合、抵当権の実行が土地について行われたのか、建物について行われたのかで判断が異なります。
土地の抵当権が実行された場合、法定地上権は成立しません。なぜなら、抵当権者(債権者)は更地としての価値を期待して抵当権を設定したので、法定地上権が設定されたのでは、債権者の権利が侵害されるからです。
建物の抵当権が実行された場合、建物については法定地上権が成立しますが、これを土地の抵当権者には対抗できません。つまり法定地上権は成立しません。しかし、抵当権の設定順位が土地及び建物で同じ場合で、かつ新建物が建築される前に土地に後順位抵当権が設定されなかった場合など、実質的な対抗問題が生じない場合には、法定地上権が成立します。
抵当権設定後の建物の物理的変化の具体例
土地のみに抵当権設定後、建物が滅失・再建築された場合
次の3つで法定地上権の成否が異なります。
- 土地抵当権実行時、再建築されていないとき
- 土地抵当権実行時、既に再建築されているとき
- 土地抵当権実行時、建物が同一土地内で移築・増改築されているとき
・土地抵当権実行時、再建築されていないとき
建物が存在しないので、法定地上権は成立しません。
・土地抵当権実行時、既に再建築されているとき
旧建物と同一の範囲で法定地上権が成立する。
・土地抵当権実行時、建物が同一土地内で移築・増改築されているとき
地上の建物が移転され、又は増改築されていても、前の建物の利用のために必要であったと認められる範囲にとどまっている限り、法定地上権は成立する。
例えば、抵当権設定時には住宅1棟だったのにその後もう1棟の建物を建築した場合、後から建築した建物が物置などの付属建物の場合は法定地上権が成立します。違う住宅をもう1棟建築したような場合には、従前の建物の範囲には法定地上権が成立しますが、新建物の範囲には法定地上権は成立しません。
土地と建物が同一の所有者に属していること(所有者要件)
所有者要件については、土地が共有の場合、建物が共有の場合など、ケースが複雑なので別記事で解説しています。