不動産登記法は法務局に地図を備え付けることを義務付けています。
不動産登記法第14条1項
登記所には、地図及び建物所在図を備え付けるものとする
そもそも不動産登記は公示を目的とするものなので、登記された土地が特定できなければ意味がありません。そのため、その土地がどこにあるのか、土地の範囲はどこまでなのか(現地復元能力といいます)を客観的に示す”地図”の形で法務局に備え付けることにしたのです。
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法14条地図とは何か?
不動産登記法の要求する要件をすべて備えた地図をその条文をとって、「法14条地図」といいます。では、「法14条地図」として扱われる要件にはどのようなものがあるのでしょうか。不動産登記規則第10条5項・同条6項に記載があります。
法14条地図として認められる具体例
- 国土調査による地図
- 土地改良による地図
- 土地区画整理による地図
法14条地図の役割
不動産登記法における「地図」とは、不動産登記法第14条第1項に規定される図面であり、土地の面積や距離・形状・位置について正確性が高く、境界を一定の誤差の範囲内で復元可能な図面です。この復元可能ということを「現地復元力」や「現地復元能力」といいます。
土地の登記簿(全部事項証明書)の表題部には、当該土地の所在・地番・地目・地積が記載されますが、登記された土地が実際どこに位置し、どのような形状で、周りはどのようになっているのかが明らかでなければ、登記だけでは何の役にも立ちません。
そこで、これらを明らかにするために、不動産登記の記載を補完するものとして地図が必要になります。
現地復元能力を有することによって、火災・宅地造成などの人為的な原因、水害・地震・噴火等の自然災害によって境界が分からなくなってしまっても、法14条地図によって当該土地の筆界を復元することができます。
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公図(地図に準ずる図面)とは何か?
法は14条地図を整備することとしていますが、現状はまだまだ法14条地図が備え付けられている割合は少なく、法14条地図の備付率は約6割とも言われています。では残りの4割の地図は何か?と言いますと、旧土地台帳法よって保管されていた土地台帳附属地図を、そのまま登記所に設置し続けているのです。
土地台帳附属地図のことを公図、又は地図に準ずる図面と呼び、これは法14条地図と明確に区別されます。
公図(地図に準ずる図面)は、法14条地図の現況における不十分さを補うためのものです。
不動産登記法第14条4項
第一項の規定にかかわらず、登記所には、同項の規定により地図が備え付けられるまでの間、これに代えて、地図に準ずる図面を備え付けることができる
土地台帳は、かつては租税の徴収のために役場などの公共機関や税務署に備えられていた台帳で、明治22年頃から昭和30年代頃まで使われていました。しかし、昭和35年の不動産登記法の改正により、現在の全部事項証明書(登記簿)と一元化されて廃止されました。土地台帳附属地図は測量技術が未発達な時代に作られたものであり、古いものでは明治初期の地租改正に起源をもつ地図も多くあります。
そのため正確性には問題があり、精度が十分ではありません。不動産登記法が求める現地復元能力を有しないのです。国土交通省は、公図と現況のずれを公表しており、ずれが1m以上10m未満の土地は公図が整備されている地域の49.8%にもなります。
参考 公図と現況のずれを地図で表示してくれる都市部官民境界基本調査が便利
裁判例でも、東京高裁昭和53年12月26日判決で、「各筆の土地のおおよその位置関係、境界線のおおよその形状については、その特徴をかなり忠実に表現しているのが通常である。」、東京高裁昭和53年12月26日判決で「境界が直線であるか否か、あるいはいかなる線でどの方向に画されるかというような地形的なものは比較的正確なものということができる。」とされており、現地復元能力まではないものの、土地の位置・形状・面積・隣地との関係等を示すものとしては、公図にも信頼性があるとされています。
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法14条地図と公図の違い
法14条地図と公図の違いをここで整理しておきたいと思います。
不動産登記法が備え付けることを求めているのが法14条地図です。しかしながら整備がまだ追いつかない地域が多くあることから、その代わりとして地図に準ずる図面(公図)が備え付けられています。
法14条地図は精度も高く、現地復元能力があるといわれていますが、公図は精度が低く現地復元能力がありません。しかし、最低限として土地の位置・形状・面積・隣地との関係を表してくれるものです。
法14条地図には現地復元能力があるが、地図に準ずる図面(いわゆる公図)には現地復元能力はない。
特に公図は作成された時期がさまざまで古くは明治の地租改正の時代に作成されたものもあります。公図の精度はその作成時期によっても異なるので、いつ頃作成されたものかも精度の一つの目安となります。
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法14条地図と公図の見分け方
法務局で地図(公図)を取得してみましょう。図面の下にはその取得した地図の所在・地番、分類・種類などが記載されています。
上の例示では「地図に準ずる図面」と記載されていることが分かります。分類の欄で法14条地図か公図(地図に準ずる図面)かを見分けます。
公図・法14条地図は何に使うのか
宅地建物取引業者や不動産鑑定士などの不動産のプロは、全部事項証明書と共に法14条地図(地図に準ずる図面を含む)を取得し、現地の確定(土地の位置、形状、面積、隣地との関係等の確認)をすることとなります。
図は精度が十分とは言えませんが、裁判例では土地の位置、形状、面積、隣地の関係性を示すものとして頼りにできるとされています。不動産取引の現場では、登記だけでなく公図も取り寄せ、土地の位置や面積などを確認することは必須の業務です。
また、公図での面積測定(公図求積)に当たっては、PDFソフトなどを活用することにより簡単に面積を測ることができます。
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PDFで面積を測定するにはフリーソフトの"Foxit J-Reader"が便利
PDFにスキャンした地図などから、面積を測定することはできるんでしょうか? 特に、不動産の仕事をしていると面積を測定することが多いと思います。特に公図(法14条地図)を図上測定して求積することは多いで ...
下の記事でも触れていますが、日本のほぼ半分の地域では公図と現況のずれが「かなり大きい」とされています。それでも公図は土地の位置関係や形状などの関係性を示す唯一の資料として、使われ続けています。
参考 公図と現況のずれを地図で表示してくれる都市部官民境界基本調査が便利
公図の見方
公図では、土地の位置、形状、面積、隣地の関係性などを確認します。住宅地図などの図面や現地と比較して変わった点がないかを重点的に調査する必要があります。特に前面道路との間に何か変な土地が介在していないかなどは重要な調査です。
道路に接面していないだけで土地の価格は半値近くまで下がってしまうので、要約書などをとり怪しい土地は所有者や地目を確認します。
参考例として示した地図は東京のど真ん中、銀座4丁目の地図です。なんと法14条地図ではなく、地図に準ずる図面なんですね。
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法14条地図・公図を取得するには
法14条地図や公図は、法務局で取得することができます。
申請用紙を記入する必要がありますが、申請用紙の記入方法は法務局に記載例がありますし、今は係員が丁寧に教えてくれますので、遠慮なく聞いてみると良いでしょう。
一つ注意しなくてはいけないのは、土地の地図を取得するには土地の「地番」を知っていないと取得できないということです。都市部では住居表示というものが施行されているところが多いです。住居表示が施行されていると、住所(○丁目○番○号)と土地の地番(○○番)が異なります。地番を調べるには所有者であれば、毎年送られてくる市町村からの固定資産税の納付通知書に記載されています。
また役所で尋ねれば教えてもくれます。前もって調べてから法務局にいくようにしましょう。
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まとめ
公図と法14条地図には上記のとおり厳格に違いがありますが、実務の中では、2つを合わせて”公図”って呼ばれることも多いですね。
地図に準ずる図面も法14条地図も含めて”公図”と呼ばれたりするので、実際使うときはそのどちらなのか注意しなければいけません。