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周知の埋蔵文化財包蔵地では発掘費用を負担する?取引に当たって注意すべきこと。

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周知の埋蔵文化財包蔵地というものをご存知でしょうか?

取引しようとしている土地が埋蔵文化財包蔵地に該当していると、重要事項説明書に記載され宅建士さんより説明があります。埋蔵文化財が見つかってしまうと、開発はストップ、予想もしていなかった発掘費用が発生することもあります。

以前書いた奈良県桜井市のイオン出店予定地がまさにその例ですね。イオンの出店が完全にストップしてしまいました。

参考 埋蔵文化財包蔵地の発掘調査費はいくら?奈良県桜井市のイオン出店予定地に大規模遺跡見つかる。

周知の埋蔵文化財包蔵地に指定された土地にはどのような規制がかかるのか、どのような点に注意しなければいけないのかをまとめました。

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周知の埋蔵文化財包蔵地とは?

周知の埋蔵文化財包蔵地は文化財保護法に規定された指定地です(文化財保護法第93条第1項)。

埋蔵文化財とは、土地に埋蔵されている文化財(主に遺跡といわれている場所)のことです。具体的には、石器、土器などの遺物や貝塚、古墳、住居跡などの遺跡が土中に埋もれている土地をいいます。

埋蔵文化財の存在が知られている土地(周知の埋蔵文化財包蔵地)は全国で約46万カ所あり、毎年9千件程度の発掘調査が行われています。

参考 文化庁|埋蔵文化財

続いて、周知の埋蔵文化財包蔵地の定義です。

周知の埋蔵文化財包蔵地

貝づか、古墳その他埋蔵文化財を包蔵する土地として周知されている土地

周知の埋蔵文化財包蔵地の調査方法

市役所などの地方自治体の教育委員会、文化財係などで調査をします。文化財係は市役所の庁舎の中に入っていることもあれば、図書館などの別施設に入っていることも多いです。図書館に入っている場合は、月曜休みだったりすることもあるので、要注意です。

東京都には「東京都遺跡地図情報インターネット提供サービス」があり、ネットで調べることも可能です。東京都だけではなく、ネット上で公開している自治体も多いので「○○市 埋蔵文化財包蔵地」と検索してみると良いでしょう。

参考 東京都教育委員会|東京都遺跡地図情報インターネット提供サービス

周知の埋蔵文化財包蔵地に該当するかどうか、該当する場合は遺跡名も確認します。もし包蔵地に該当しなければそれで調査終了です。包蔵地に該当していない場合でも、包蔵地から50mの範囲内にあれば、届出が必要又は慎重工事などが必要とする自治体もあります。各自治体に確認してみてください。

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周知の埋蔵文化財包蔵地に該当したら?

周知の埋蔵文化財包蔵地には文化財保護法に規定される規制・制限が存在します。

周知の埋蔵文化財包蔵地の規制内容

周知の埋蔵文化財包蔵地を土木工事等の目的(埋蔵文化財の調査の目的を除く)で発掘しようとする者は、発掘に着手する日の60日前までに文化庁長官に届出をしなければなりません(文化財保護法93・94条)。

この届出は、該当する市町村教育委員会を通じて、都道府県・政令指定都市等の教育委員会になされるので、実務的には市町村の教育委員会で手続きを行います。

この届出は工事の規模の大小に関わらず必要となります。

申請届出の後、審査が行われ1週間程度で次の回答が自治体から連絡されます。

包蔵地の審査

  • 埋蔵文化財に影響がないと判断できる場合     → 「慎重工事」
  • 埋蔵文化財へ影響する可能性が否定できない場合  → 「工事立会」
  • 埋蔵文化財を破壊する可能性がある場合      → 「要試掘」

引用 福岡市|埋蔵文化財包蔵地内での工事手続き ガイド 

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慎重工事

基礎等が文化財に影響がないと判断できるばあい、慎重工事となります。その名のとおり、慎重に工事を実施してください。

工事立ち合い

自治体担当者が工事に立ち会います。立ち会いのタイミングはベタ基礎等の場合は栗石を敷設する前が一般的です。立ち合いの日程や時間については担当者と事前協議します。

立ち会いによって文化財に影響がないことが確認されると工事の着工が可能となります。

要試掘

基礎が文化財を破壊する可能性を否定できない場合、又は基礎が文化財を破壊する可能性が認められる場合は、要試掘と判断されます。試掘調査では、重機で地面を掘削し、文化財の有無を確認します。

試掘のタイミングについては、工事立ち合いと同じで自治体担当者と事前協議します。試掘は数時間~1日程度で終了します。

試掘調査の結果、文化財が無かった場合は工事着工が可能になります。では文化財があった場合はどのような対応が必要になるでしょうか。

文化財があった場合

  • 文化財の埋蔵されている深さが深く、基礎底が文化財に影響しない場合 → 「慎重工事」
  • 文化財の埋蔵されている深さと基礎底の深さが同じで程度である場合 → 「工事立会」
  • 文化財の埋蔵されている深さが浅く基礎が文化財を破壊する場合 → 「発掘調査」

試掘・発掘費用は誰が負担する?

試掘・発掘費用は誰が負担するのでしょうか?

発掘調査等に要する費用は、原則として開発事業者等が負担することとされています。

発掘費用は開発事業者負担

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試掘・発掘調査費用には補助金などもあります。

試掘調査費用は、原則として自治体が負担してくれる場合が多いです。ただし、試掘調査は更地の状態で行われることから、樹木・埋設物等の障害物はあらかじめ撤去しておく必要があります。また、舗装している場合は、申請者さまのご負担で試掘箇所にカッターを入れる必要があります。

届出者が自己居住(非営利目的)のために建設する専用住宅については、国が補助する制度があります。自治体が窓口となるので不動産のある自治体窓口で確認しましょう。

分譲住宅、集合住宅、店舗等、営利事業による開発行為については、届出者(事業者)が発掘調査費用を負担しなければなりません。

試掘・発掘調査の期間はどれくらい?

試掘は数時間から1日程度で終わるのがほとんどです。

発掘調査(本調査)は、遺跡の大きさや調査の難易度などで異なります。個別性が非常に強いので自治体と協議しましょう。

重要事項説明書における埋蔵文化財包蔵地の扱い・記載例

宅建士として、周知の埋蔵文化財包蔵地をどのように重要事項説明書に記載するのかを説明します。

周知の埋蔵文化財包蔵地にがいとうする場合、不動産の重要事項説明書「都市計画法・建築基準法・土地区画整理法を除くその他の法令による制限」の文化財保護法にチェックを入れます。

下の画像は実際の重要事項説明書の該当欄です。

宅建士としての調査項目は上に説明したとおりですが、制限の概要には、周知の埋蔵文化財包蔵地内で土木工事等の建築工事を行う場合は、工事着工の60日前までに文化庁長官に届出をしなければならない旨の記載をします。

この際、試掘に際しては、自治体や国庫の補助を受けられるかどうか、過去の近隣の調査で重要な史跡などの発掘があったかどうかなども説明しておかなければなりません。

冒頭で説明した奈良のイオンの例のように、近隣住民がみんな知っているような大規模遺跡の発見情報がある場合もあります。包蔵地に該当していますという説明だけでは説明不足です。この件では発掘調査費用は何と18億円と見込まれていました。この18億円は不動産の買い主、つまり開発事業者が負担する金額になりますが、どのような調査が必要かどうかまで自治体で確認することが必要です。

参考記事 埋蔵文化財包蔵地の発掘調査費はいくら?奈良県桜井市のイオン出店予定地に大規模遺跡見つかる。

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