森友学園の国有地払下げ問題ですが、一昨日前から賃料の減額の話が出てきましたね。その他にも岡山理科大学(加計学園グループ)への数十億円相当の土地の無償譲渡なんて問題も新たに出てきているようです。
以前、森友学園に払い下げられた土地の価格について検討した記事を書きました。
参考 森友学園の国有地払下げ、鑑定評価は適正だった?不動産鑑定士の関りは?
今回は賃料減額についての記事を書いてみたいと思います。
森友学園への賃料減額の流れ
2015年1月
不動産鑑定士が地代の鑑定評価をし、賃料が年額4200万円と森友学園に提示。条件は10年以内に土地を購入する前提の特約付きの定期借地契約です。
賃料:4200万円
2015年4月
森友学園が行ったボーリング調査結果により、土地には元々池沼であった部分が判明。表層付近が軟弱であり、地盤改良工事を要するとの意見がなされます。
1月の鑑定評価でも元々が池や沼であったことは認識されており、鑑定評価書には”もともと池や沼であったものの、価格への影響は考慮する必要がない”と記されていたようです。つまり、不動産鑑定士は元々が池沼であったことは、賃料には影響しないと判断したということですね。
ところが一転、同じ不動産鑑定士により、ボーリング調査の結果、表層付近の土壌が軟弱であったことを考慮する価格等調査報告書が提出されます。
1月の鑑定評価の際は、ボーリング調査はしていなかったはずなので、新たなる調査によって新事実が判明すれば、それを盛り込んだ評価をすることはそこまで問題のあることは無いです。前提条件が異なれば、鑑定評価の結果も異なります。
1月に鑑定評価を行っているので、4月は簡易な調査報告書で不動産鑑定士は対応しているようです。不動産鑑定士が発行する書類には鑑定評価書と調査報告書の主に2つがありますが、いずれも責任は原則同じです。
このときに不動産鑑定士により示された賃料は3600万円です。
賃料:3600万円(△15%)
2015年5月29日
財務局と森友学園が賃貸借契約を締結。賃料は2730万円。
賃料:2730万円(△35%)
4月の価格等調査から5月29日の賃貸借契約締結まで、どのような経緯があったかは分かりませんが、不動産鑑定士により示された賃料3600万円よりも25%安い賃料2730万円で契約が締結されます。最初に示された4200万円からは35%も安くなっています。
最初に示された賃料4200万円についての考察
「森友学園の国有地払下げ、鑑定評価は適正だった?不動産鑑定士の関りは?」の記事にも書きましたが、森友学園国有地の更地価格(鑑定評価額)は、9億5600万円です。
森友学園(鑑定):9億5600万円(8770㎡)、1㎡当たり109,000円
地代の利回りを計算してみましょう。単純に賃料(年額)を土地価格で割ります。
4200万円÷9億5600万円=4.4%(利回り)
この4.4%の地代利回りは高いんでしょうか?安いんでしょうか?
まず、契約の定期借地権がどのような性格のものかを調べる必要があります。もちろん契約書を直接見ているわけではなく、色々な記事による推測なのでその点ご了承ください。
契約期間は10年とされているとのことなので、定期借地権の中でも一般定期借地権ではなく、事業用定期借地権であることが分かります。地代利回りを考察する上で、なぜ定期借地権の種類を確定する必要があるかというと、一般的に事業用定期借地権の地代利回りの方が高いからです。
LLP不動産調査研究会という団体が、競売の落札事例により地代の利回りを分析したレポートを出しています。公開されているデータを見てみましょう。
平成24年の地代利回りは、全国平均で次にようになっています。
- 旧法の借地:2.2%
- 一般定期借地:2.3%
- 事業用定期借地:6.6%
事業用定期借地が、一般定期借地よりも利回りが高いのが分かると思います。豊中市のある大阪府(大阪市外)の数字も見てみましょう。
- 旧法の借地:2.3%
- 一般定期借地:2.9%
- 事業用定期借地:6.9%
このデータだけから見ると、4.4%の事業用敵借地権の地代利回りは若干低いです。低いということは賃料が安くなるということですね。
でも不動産鑑定士が判定するレンジからは、飛びぬけて低い利回りでもないというのが個人的な感想です。本音をいえば、評価の背景や価格形成要因、前提条件などを全部把握している訳ではないので正直分からないというのが率直な感想です。
まとめ
このような事件があると、テレビでコメントするような不動産鑑定士も見かけますが、よく背景も知らないのに責任もなくコメントできるなーと思って見ています。それが不動産鑑定士の責務だと思ってコメントされていると思うので、スタンスの違いだと思いますし、悪いことだとも思いません。ただ、知らないことだらけなのによくコメントできるなとは思います。
先日もひるおびでコメントされていた不動産鑑定士さんがいらっしゃいました。どんな方なんだろう?と思って興味半分でホームページを覗いてみたんですが、色々と残念な点が見受けられました。
未だに「簡易鑑定」なんて言葉を使っているような人が不動産鑑定士の代表のようにテレビに出られたらどうなんでしょうね。残念な限りです。
賃料については、先日なかなか面白い実務書が出版社プログレスより発売されています。
私ももうちょっと勉強しないといけないと思いつつ、積読になっています。