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長屋とは(棟割長屋と重層長屋)?共同住宅とはどう違う?

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長屋(ながや)という言葉を聞いたことがあると思います。

でも、共同住宅とどう違うのかをきちんと理解している人は少ないです。

また、長屋というと日本古来の古いイメージがありますが、今はテラスハウス・タウンハウスなどと洒落た呼び名の元、おしゃれな長屋も増えています。

この記事では、長屋とはどのような建築形態なのか、共同住宅との違いなどを解説します。

長屋とは?

長屋は集合住宅の1つの形態を指します。

wikipediaで定義を確認してみましょう。

長屋

複数の住戸が水平方向に連なり、壁を共有する物。あるいは(同じことだが)1棟の建物を水平方向に区分し、それぞれ独立した住戸とした物。

それぞれの住戸に玄関が付いている。長屋の条件として必ず求められることは、各戸の玄関が直接接道など外界に接しており、その玄関を他の住戸と共有していてはならないことである。

テラスハウスとも呼ばれる。

長屋の特徴は1棟の建物に複数住戸が存在し、その住戸がそれぞれ独立している点です。

長屋は水平方向に分かれている棟割長屋(むねわりながや)が一般的ですが、垂直方向に重ねた形式の重層長屋もあります。

棟割長屋(むねわりながや)

2階建ての建物を3戸に分けてある長屋をイメージしてみました。

3戸はそれぞれ独立しており、界壁(かいへき)で区切られています。

界壁とは、各住戸の間を区切る壁のことをいいます。界壁には建築基準法上、遮音性能や耐火性能が求められています。また、この界壁は天井裏まで達しているように設けなければなりません。

重層長屋

住戸を垂直方向に重ねた形式の長屋を重層長屋といいます。

建物を横から見た図を作成してみました。

建築基準法上は、界壁の規定のみで界床の規定はないため、法律上の遮音性能や耐火性能の基準はありません。

共同住宅と長屋の違い

長屋に似たものに共同住宅があります。

では具体的にどのように違うのでしょうか?

共同住宅

共同住宅には共用部分が存在します。

道路から住戸に入る際は、廊下・階段・エントランスなどの共用部分をとおります。

長屋

共同住宅に共用部分があるのに対して、長屋には共用部分がありません。

各住戸それぞれが、単独で道路へ行き来できます。各戸が独立しているのが長屋の特徴です。

長屋は特殊建築物ではない

建築物の中に、特殊建築物と呼ばれるものがあります。

特殊建築物は、火災発生のおそれが大きいなどの用途上の理由から、防火や避難などに関する規制が、ほかの建築物よりも厳しく適用されています。

そして、共同住宅は特殊建築物に該当しますが、長屋は特殊建築物に該当しません。

用途 特殊建築物
共同住宅
長屋 ×

特殊建築物については、別記事「特殊建築物とは?具体例や紛らわしい建築物」が詳しく解説しています。

特殊建築物とは?具体例や紛らわしい建築物

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路地状敷地(旗竿地)での長屋の建築に規制が!

特に東京都で問題となっていたのが、旗竿地(路地状敷地)での長屋の建築です。

東京都建築安全条例により、原則として路地状敷地には特殊建築物を建築することはできません。

参考 敷地延長、路地状敷地、旗竿地、袋地とは?メリット・デメリットはあるの?

共同住宅は特殊建築物に該当することから、路地状敷地での共同住宅の建築は困難でしたが、長屋は特殊建築物ではないことから何の規制も受けずに建築することができました。

http://www.amix.co.jp/build/0240zyuusou.html

抜け穴として長屋の建築が増え、しかも大規模化する傾向にあったことから、防災の観点からしばしば問題になっていました。

東京都建築安全条例の改正により長屋の建築が困難に

東京都建築安全条例が一部改正され、長屋の建築に関する規制が強化されました(平成31年4月1日施行)。

参考 東京都都市整備局|東京都建築安全条例の改正について(平成30年10月15日一部施行)

条例改正の理由は3点ありますが、その内一つが長屋の建築に関するものです。

東京都の資料を元に解説します。

引用 東京都都市整備局|東京都建築安全条例の改正概要(平成 30 年 10 月 15 日改正)

図の中の記号

  • ①・・・建物規模に応じた通路幅
  • ②・・・建物規模にかかわらず設ける通路
  • ③・・・通路延長に対する通路幅

通路に関する規定

主要な出入口が道路に面しない住戸部分の床面積の合計が300 ㎡を超える、又は主要な出入口が道路に面しない住戸が10を超える場合は、敷地内の通路幅を改正前の2m以上から3m以上とすることとなりました。

路地状敷地の通路の規制

路地状敷地の通路の幅は建物規模に応じて2m又は3mが必要となります。

通路延長に対する通路幅

主要な出入口から道路までの敷地内の通路延長が35mを超える場合には、その通路幅を4m以上とすることとなりました。

これらの規制は平成31年4月1日から施行されますが、従前この基準を満たしていない長屋の建築物は、既存不適格建築物として扱われることになります。

参考 既存不適格建築物とは?違法建築物との違いも解説します。

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