登記を取得してみよう。のシリーズですが、今回は数年前に日本全国の話題となった尖閣諸島の登記を調べてみました。
参考 「地主」栗原家には小泉政権以降、億単位の賃料支払い――尖閣諸島、領有と登記の経緯
歴史的なことや領土問題に踏み込むつもりはないので、さらりと登記について書いていきます。
尖閣諸島の登記
尖閣諸島は魚釣島、北小島、南小島、久場島、大正島、沖の北岩、沖の南岩、飛瀬などで構成されていますが、登記があるのは”島”と明記されている5つのみ。沖の北岩、沖の南岩、飛瀬については、登記があるのか分かりませんでした(たぶん無いのだと思います)。
尖閣諸島の地番の調べ方ですが、wikipediaに記載されていました。調査いらずです。ではそれぞれの登記を記載していきます。
魚釣島
- 所在:石垣市字登野城南小島
- 地番:2392番
- 地目:原野
- 地積:3,641,983㎡
- 所有者:国土交通省
平成24年9月11日の売買により埼玉県の個人から国土交通省が買収しています。金額は後で記載する北小島、南小島を合わせた3島で20億5千万円です。
南小島
- 所在:石垣市字登野城南小島
- 地番:2390番
- 地目:原野
- 地積:324,628㎡
- 所有者:国土交通省
北小島
- 所在:石垣市字登野城南小島
- 地番:2391番
- 地目:原野
- 地積:258,842㎡
- 所有者:国土交通省
久場島(くばじま)
- 所在:石垣市字登野城南小島
- 地番:2393番
- 地目:原野
- 地積:874,049㎡
- 所有者:埼玉県の個人
所有者は個人名なので一応伏せましたが、検索すればすぐに名前が出てきます。久場島は大正島と同じく国有地化からははずされています。
2011年9月には中国漁船により領海侵犯が起こったのはこの久場島でした。
国有地化からは外された理由は、在日米軍の射爆撃場に設定されているからだそうです。米軍の管理下にあり、日本人であれど「米軍の許可」なしには立ち入ることもできない島です。
1978年6月以降、実際に射爆撃場としては使用されていないとのことですが、このような事情により国有地化が憚られたようです。
大正島
- 所在:石垣市字登野城南小島
- 地番:2394番
- 地目:原野
- 地積:41,368㎡
- 所有者:大蔵省
大正島だけは最初から国の所有になります。上の4島もそもそもは国有地でしたが、1896年から古賀辰四郎という個人が貸与を受けて使用しており、その後1932年に子孫が有償で払い下げられた経緯があるようです。
売買価格と地代、利回りの計算
魚釣島、南小島、北小島の3島は平成24年9月に国有地となっています。ではその売買価格はいくらだったんでしょうか。金額を調べるとともに、その金額について考察していきたいと思います。
売買価格
3島それぞれの価格は分からないので、ざっくり20億5千万円を3島の地積(422万5453㎡)の合計で割って単価を出してみます。単価は405円/㎡です。
いまいちピンとこない方も多いかと思いますが、めっちゃ高いです。個人的な感覚でいうと数十円つけば、御の字じゃない?って思います。
補償では時価と買収すると決められていますが、政策的な観点もあったんでしょうか。
wikipediaによると所有していた埼玉の個人は1970年代に約4600万円で購入したようです。下で記述する地代も合わせたらぼろもうけですね。
国が購入する前に東京都が購入を検討していました。そのとき不動産鑑定を委託されたのが日本で最大の鑑定機関、日本不動産研究所です。委託金額は1575万円でした。これが高いのか安いのか分かりませんが、数倍もらっても引き受けたくはありませんね。おっかなくて仕方ありません。
当時の記事は検索するとまだ日本経済新聞のものがネットに残っていました。
東京都の尖閣諸島調査団を乗せたチャーター船「航洋丸」(2474トン)が2日、尖閣諸島の周辺海域に到着し、洋上からの調査が始まった。魚釣島、北小島、南小島の3島を夕方まで洋上から調査し、夜に帰港する。
都によると、午前5時ごろに島の周辺に到着し、同6時15分ごろに水質調査を開始。続いて小型船でも作業を始めた。天候は晴れで、波の高さは0.8メートルという。
調査団は不動産鑑定のため海岸線の状況を確認したり、購入後の活用方法を検討するため海鳥や野生化したヤギの生息実態を調べたりする。
都は3島を購入する予定で、地権者から土地を賃貸借している政府に上陸申請したが、政府は許可しなかった。〔共同〕
調査時の様子は東京都のホームページにも写真が記載されています。
地代
また買収されるまでは賃借権の設定登記もなされていました。
- 魚釣島:年額2112万円
- 南小島:年額188万円
- 北小島:年額150万円
売買価格が分かっているので、グロスの利回りを計算してみましょう。例によって売買価格は3島合計の金額しか分からないので、利回りも3島合計で計算します。賃料は3島合計で2450万円。売買総額で割ってみると、1.1%の粗利回りです。
思ったより低いなーって思ったんですが、売買価格が高すぎるからなんでしょうね。
竹島の所有権
領土問題でもめている島(土地)としては、尖閣諸島のほかには竹島が有名です。竹島には登記があるの?所有権者は誰?と気になりますね。
竹島は「島根県隠岐郡隠岐の島町」に存するとされています。隠岐の島町は人口1万5千程度の小さな町ですが、こんな小さな自治体に日本の領土の核となる竹島を背負わせるのは何か酷な気がしますね。
町のホームページには竹島についてのページがきちんと存在していました。
URL 隠岐の島町|竹島について
さて、竹島の登記の話に戻りますが、竹島には登記があるのでしょうか?結論からお話しすると竹島には登記はなさそうです。なぜなら竹島は無地番だそうだからです。
地番の無い土地は、番外地(ばんがいち)や無バンチ(むばんち)、無地番地(むちばんち)などと呼ばれますが、番外地は国有地とされています。
登記事項証明書になく地図に地番が付いていないものは国有地ですが、所管する機関は使用形態によって異なります。
以前は赤線、青線と呼ばれた無地番地がたくさんありましたが、地方分権一括法によって多くの里道・水路が平成17年3月末までに市町村に譲与(移管)されました。そのほかにも海浜地(海岸にある護岸敷、砂浜)などは国有地とされています。
無番地の話をしはじめるとそれだけで一つの記事になってしまうので少しだけにしますが、自衛隊用地も無地番地の代表格です。JR四ツ谷駅にも無番地が存在するというのもマイナーだけど有名な話です。
番外地は不動産登記(表題登記や所有権保存登記)のされていない土地になるので、竹島については登記は取得できないというのが結論です。
管理はどこなんでしょう。尖閣諸島の所有者は国土交通省だったので、同様に国土交通省なのかもしれませんね。