容積率の緩和措置の中に、「前面道路が特定道路に接続する場合の容積率の緩和」というものがあります。
名称も長くて分かりづらいこの規定ですが、図解をもとに分かりやすく説明してみたいと思います。
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前面道路が特定道路に接続する容積率の緩和の規定
前面道路が特定道路に接続する容積率の緩和は、建築基準法第52条9項に規定されています。
建築基準法 第52条9項 (容積率)
建築物の敷地が、幅員十五メートル以上の道路(以下この項において「特定道路」という。)に接続する幅員六メートル以上十二メートル未満の前面道路のうち当該特定道路からの延長が七十メートル以内の部分において接する場合における当該建築物に対する第二項から第七項までの規定の適用については、第二項中「幅員」とあるのは、「幅員(第九項の特定道路に接続する同項の前面道路のうち当該特定道路からの延長が七十メートル以内の部分にあつては、その幅員に、当該特定道路から当該建築物の敷地が接する当該前面道路の部分までの延長に応じて政令で定める数値を加えたもの)」とする。
簡単にまとめると、
前面道路の幅員が6m以上、12m未満であり、前面道路が幅員15m以上の特定道路に接続する場合は、前面道路の幅員を広くすることができる(みなし道路幅員)ということです。
簡単にまとめるつもりが、長くなってしまいましたね。
メモ
前面道路が特定道路に接続する容積率の緩和の規定は、広い幅員の道路に接する敷地と、それに隣接・近接する狭い幅員の道路に接する敷地の容積率の急激な変化(違い)を防ぐことを目的としています。
なぜ前面道路の幅員が広いと容積率の緩和になる?
容積率は前面道路の幅員によって制限されます。
つまり、都市計画において300%と容積率が指定されていたとしても、道路の幅員が狭いと例えば180%などの小さい容積率に制限されてしまうのです。
前面道路の幅員による容積率の制限(建基法第52条2項)
前面道路の幅員が12m未満である建築物の容積率は、用途地域によって定められた掛け目を前面道路の幅員(m)に乗じた数字以下でなければなりません。
下の例でいえば、前面道路との計算で180%と計算されました。
そうすると、都市計画でもっと大きな容積率、例えば200%や300%でも180%の容積率しか使えません。
このように、道路の幅員が狭いと容積率が制限されてしまいます。
詳しい解説は、別記事「容積率とは?計算方法・求め方や調べ方・特例をまとめてみました。」でも解説していますので、容積率の基礎を学びたい方は是非参考にしてみてください。
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前面道路が特定道路に接続する容積率の緩和の解説
具体例を用いて、「前面道路が特定道路に接続する容積率の緩和」を解説していきます。
緩和を受ける条件
前面道路が特定道路に接続する容積率の緩和を受けるためには、次の条件があります。
緩和を受ける条件
- 前面道路が6m以上、12m未満
- 特定道路から70m以内の場所にある
- 特定道路は15m以上の幅員
分かりやすいように図解してみましょう。
計算式
前面道路が特定道路に接続する容積率の緩和の計算式は次のとおりです。
(Wa + Wr)× 定数 = 容積率
- Wa:建基法52-9の政令による数値(m)
- Wr:前面道路の幅員(m)
- 定数:住居系は0.4、その他は0.6
Waの数値だけ、幅員を広くすることができます。そのため、前面道路の幅員に政令の数値を加えたもの(Wa + Wr)をみなし道路幅員と呼びます。
建基法52-9の政令による数値
Wa = (12-Wr)×(70-L)÷70
L:敷地から特定道路までの延長(m)
具体的な数字で計算してみよう
具体的な数字で試しに計算してみましょう。
設例として次の条件を設定します。
具体例
- 指定容積率600%の商業地域
- 前面道路(Wr):6m
- 特定道路からの距離(L):35m
図解して、右に公式に数字を合わせた計算をしてみました。
本来であれば、前面道路かける定数(6m × 0.6)で360%の基準容積率となるところ、前面道路が特定道路に接続していることから、緩和の適用を受け、540%の基準容積率となりました。
前面道路が特定道路に接続する容積率の緩和のまとめ
さいごにみなし道路幅員がどのようになっているのか分かりやすいように図に示してみました。
70mになると、緩和措置がなくなるため、「みなし道路幅員 = 前面道路幅員」となるのが分かるかと思います。