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鑑定評価

損失補償の評価単位の判定、画地認定について

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おはようございます。不動産鑑定士のreatipsです。

先日市役所の方が相談があると言って来社されました。話を聞くと、用地買収する土地の評価をしているんだけど評価の単位をどのように判定したら良いのか分からないとのことでした。

評価単位判定の基本的な考え方

評価単位の判定にあたっては、土地評価事務処理要領第1条や損失補償基準細則第2-3などに原則は示されていますが、現実は原則論だけでは割り切れないものが多々あります。

(土地評価事務処理要領第1条)

土地の正常な取引価格は、次の各号の一に該当する土地(以下「画地」という)を単位として評価するものとする。ただし、当該土地の形状等から一体的に利用することが困難なものは、一体的な利用が可能な範囲をもって画地とするものとする。

損失補償基準細則第2-3には、地上権や賃借権が設定されて一体利用されている場合の評価単位についての定めがあります。

(損失補償基準細則第2-3)

  • 同一の利用目的に供するため、同一の権利者が隣接する二以上の土地に権利の設定を受けており、かつ、それらの権利の取引が一体的に行われることが通例であると認められるときは、それらの土地からなる一の画地に権利が設定されているものとみなして算定するものとする。
  • 同一の利用目的に供するため、土地所有者が所有地に隣接する土地に権利の設定を受けている場合の第2-2および前項の適用については、当該所有地に前項の権利を設定しているものとみなすものとする。

土地を評価する目的は今回記述する用地の取得(損失補償)のほか、相続税のための評価、固定資産税のための評価、その他鑑定評価の利用目的に応じた評価など様々な場面が想定されます。

評価の単位をどのように判定するかは、それぞれの目的に応じた画地認定をすることが必要となりますので、全ての目的に対応した画地認定の基準ではありませんのでご注意ください。

評価単位の判定について詳しく解説された書類はあまり多くありません。様々な書類を参考にして次から具体例を説明していきますが、実際の利用状況や地域の状況を鑑みると異なる画地認定を行うことも多々ありますのでこの点も注意が必要です。

一筆の土地の上に住宅と畑がある場合

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条件

  • 土地・建物は同一所有者
  • 土地は一筆
  • 畑は自家消費程度の小規模なもの

認定

1画地

備考

畑部分が別用途と判断されれば、2画地となる場合もあります。その場合の判断基準は、営農の規模、労働力や営利性などの目的などが考慮されます。

画地内に段差のある土地

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条件

  • 土地・建物は同一所有者
  • 土地は一筆
  • 段差は2mほど

認定

2画地

備考

一体としての利用が可能な程度の段差なら1画地として認定することになります。2画地と記載しましたが、実際は現況をもとに判断するので1画地として判断することも多いと思います。低い部分を別の画地としてしまうと、建ぺい率や容積率がオーバーしてしまう場合なども1画地として判断すべきでしょう。

判断基準は段差の程度や土地の利用状況が基準となります。

画地内に法面のある土地

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条件

  • 土地・建物は同一所有者
  • 土地は一筆
  • 住宅の背後に法面がある

認定

1画地

備考

斜度がきつく、一体的な利用が困難と認められれば2画地として認定します。

画地内のどの位置に法面があるかも画地認定の判断基準となります。道と住宅の間に法面がある場合は、ある程度斜度がきつくても1画地として認定すべきでしょう。

画地内に明確に区分された農地がある場合

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条件

  • 土地・建物は同一所有者
  • 土地は一筆
  • 住宅の周りに田があり、一段低くなって明確に宅地部分と別れている

認定

2画地

備考

同一用途であるか、一体利用が可能なのかを基準に判断することになります。

この場合も「一筆の土地の上に住宅と畑がある場合」と同じように判断します。

画地内に自宅と店舗が存する場合

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条件

  • 土地・建物は同一所有者、利用も同一
  • 土地は一筆

認定

1画地

備考

自宅と店舗の関連性が強い場合は1画地として認定します。個々の独立性が強ければ2画地として認定される場合もあります。

 

画地内に自宅と共同住宅が存する場合

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条件

  • 土地・建物は同一所有者
  • 土地は一筆
  • 自宅と共同住宅部分が塀(工作物)にて区分されている。

認定

2画地

備考

前述の店舗と同様、自宅とその他の用途の建物(今回は共同住宅)の関連性の強さを基準に判断します。また、用途が異なる部分が明確に区分されているかどうかも判断の基準となります。

画地内に店舗とその来客者用の駐車場がある場合

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条件

  • 土地・建物は同一所有者
  • 土地は駐車場部分と店舗部分の2筆

認定

1画地

備考

利用目的の同一性から判断すると、1画地となるのが相当です。しかしながら、市街化調整区域内の土地で、駐車場部分には建物の建築が難しい場合などは2画地としての判断の余地もあります。

画地内に複数の貸家が建てられている場合

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条件

  • 土地・建物は同一所有者
  • 土地は一筆

認定

1画地

備考

借家人は土地に対しては強固な権利をもっていないため、貸家それぞれの独立性は弱いものと考えられます。利用目的の同一性を考慮すると、全体として貸家業を営んでいる土地と判断するのが妥当だと思われます。

画地内に複数の貸家が建てられている場合

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条件

  • A所有の土地に、AとB所有の建物が存している
  • Bの土地利用権は借地権
  • 土地は一筆

認定

2画地

備考

 

借地権という権利が設定されて土地が利用されていることから、Aの土地といえども区分して画地を認定するのが相当です。Bの土地に対する支配力が弱い場合、その部分の独立性が認められずに1画地と判断することもあるでしょう。

画地内に複数の貸家が建てられている場合

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条件

  • A所有の2筆の土地に、B所有の建物が存している
  • Bの土地利用権は借地権
  • 土地は2筆

認定

1画地

備考

2筆の土地が一体として同一利用目的のために利用されていることから1画地として認定されます。

参考となる書籍

標準的な判断を代表的な例をもとに記載してみました。原則はあるものの、個々の判断については、実際の利用状況や地域によって異なることは前述のとおりです。

評価単位(画地認定)など、損失補償についての基本書は次の書籍が参考になります。

 




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