建物を建築する際の制限として重要なものに容積率があります。
容積率の基本的な説明については「容積率とは?計算方法・求め方や調べ方・特例をまとめてみました。」で詳しく解説しています。
容積率には、主に次の3種類があります。
容積率の種類
- 指定容積率
- 基準容積率
- 使用容積率
今日はこの3つの容積率(指定・基準・使用)の違いを解説していきます。
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指定容積率とは
容積率は都市計画において定められます。これを指定容積率といいます。
そして、定められる容積率は用途地域によって異なり、これは建築基準法で次のように定められています。
用途地域 | 容積率(%) |
第一種低層住居専用地域 | 50,60,80,100,150,200 |
第二種低層住居専用地域 | 同上 |
第一種中高層住居専用地域 | 100,150,200,300,400,500 |
第二種中高層住居専用地域 | 同上 |
第一種住居地域 | 100,150,200,300,400,500 |
第二種住居地域 | 同上 |
準住居地域 | 同上 |
近隣商業地域 | 同上 |
準工業地域 | 同上 |
商業地域 | 200~1300(100刻み) |
工業地域 | 100,150,200,300,400 |
工業専用地域 | 同上 |
用途地域の定め無し | 50,80,100,200,300,400 |
戸建ての住宅地を想定している第一種低層住居専用地域などでは容積率は小さく、高層ビルなども建築できる商業地域では、定められる容積率が大きくなっていることが分かります。
東京駅丸の内口の高層ビル街は、最高限度である容積率1300%が定められています。
用途地域については別記事「用途地域の種類一覧。調べ方についてもまとめました。」にて解説していますので参考にしてみてください。
指定容積率の調べ方
市役所の窓口(都市計画課など)で容積率を確認することができます。
窓口では下のようにカラフルに色塗りされた「都市計画図」で容積率をその他の用途地域、建ぺい率、防火地域などと一緒に確認することができます。
丸の中に数字と文字が書かれています。例えばピンク色では「200、近商、80」と書かれていますね。
- 容積率 … 200%
- 用途地域 … 近隣商業地域
- 建ぺい率 … 80%
ということを、示しています。
最近は都市計画情報をネットで公開している自治体も増えています。「〇〇市 用途地域(容積率)」などと検索すれば、都市計画図を閲覧することもできます。
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基準容積率とは
都市計画で指定された容積率が指定容積率でした。基準容積率は建築基準法による各種規定によって算出された容積率のことをいいます。地域ごとに指定されたものが指定容積率、個別の土地そのものの容積率が基準容積率。と言い換えても良いかもしれません。建築基準法の規定は第52条(容積率)に各種の制限が記載されています。
具体的には建築基準法には「前面道路の幅員による容積率の制限」があります。
前面道路の幅員による容積率の制限(建基法第52条2項)
前面道路の幅員が12m未満である建築物の容積率は、用途地域によって定められた掛け目を前面道路の幅員(m)に乗じた数字以下でなければなりません。
数式と具体的な計算例をあげてみます。
この場合、計算された数字が180%となりました。ですので例えば指定容積率が200%としても、基準容積率が180%なので、この土地には180%の容積率までしか建築物を建てることができません。
指定容積率が200% > 基準容積率 180% 厳しい方が採用(180%)
上の計算では定数を0.4としていますが、法令(建築基準法)又は特定行政庁により指定されます。法令では建築基準法第52条2項に記載されていますが、条文をまとめてみます。
号 | 用途地域等 | 定数 |
1号 | 第一種低層住居専用地域 第二種低層住居専用地域 |
0.4 |
2号 | 第一種中高層住居専用地域 第二種中高層住居専用地域 第一種住居地域 第二種住居地域 準住居地域 |
0.4 |
3号 | その他 | 0.6 |
用途地域等のその他(3号)は、その他の用途地域のほか、用途地域の定めのない地域(白地地域など)も含みます。
また、定数(前面道路幅員)に乗じる数値のうち、2号は特定行政庁が指定する区域では0.4、3号は特定行政庁が指定する区域では0.4又は0.8という例外もあります。
一般的には住居系は0.4、その他は0.6と覚えておけばよいでしょう。
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使用容積率とは
使用容積率は、現在建築物が建てられている場合におけるその土地の実際使われている容積率です。
200㎡の土地に延べ床面積90㎡の建物が建築されていた場合、「90㎡÷200㎡=45%」つまり45%が使用容積率となります。中古住宅の売買の際はこの使用容積率を必ず計算しなければなりません。
使用容積率が基準容積率をオーバーしていた場合、売買の対象となる建物は違法建築物である可能性が出てきます。容積率オーバーしていた場合には、別記事「既存不適格建築物とは?違法建築物との違いも解説します。」に記載したとおり、違法建築物なのか既存不適格建築物化なのかの調査が必要となります。
容積率には緩和措置がたくさんあります。容積率オーバーかも?と思っても、緩和措置によって現在の建物が建築されている可能性も多くありますので、注意が必要です。緩和措置については別記事「容積率の緩和措置、共用廊下・階段、地下室、車庫の容積不算入についてのまとめ」にまとめましたので合わせてお読みください。
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まとめ
建ぺい率や容積率は不動産を調査する上での、基本中の基本項目です。基本だから簡単と問われるとそうでもなく、各種の規程がありかなり複雑になっています。
別記事でも色んな制限・規制を解説していますので、参考にしてみてください。